写真 © 矢野紀行
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ZYX House

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場所
東京
2010

<3種の空間>

3種類の空間を積木のように重ねてつくった、都心の住宅。

3階は単身女性のためのプライベートスペース、2階はその家族のためのファミリースペース、1階はその親族の利用も可能なゲストスペース、という構成になっている。

当初、住み手の主役である単身女性は、敷地の近くに住む祖母が所有するアパートに暮らしていて、まずは彼女の新居をつくるという話から設計が始まった。彼女の家族が地方に住んでいてしばしば上京するので、くつろいだり泊まったりできる場所を確保すること、祖母宅が老朽化して建て替え時期が迫っているので、祖母の居場所を考慮すること、なども必要条件に加わった。

そうなると3世帯住宅のようなものを考えてしまいそうだが、敷地は12坪しかない。割り切って、3世帯の居場所として必要なものが何かを厳選し、3種のスペースに分類して、それを積み上げて全体を構成することにした。

分類した、とはいえ家族間でのことなので、実際は流動的に使える。例えばキッチンは2階にしかないが、建物全体が小さいので一カ所あれば共用できると考えた。浴室・トイレは3階と1階に設けたが、これらはプライバシーの観点から、全体で二カ所必要と判断した。

敷地は山手線の駅に近い商業地域で便利な場所にあり、豊富な生活サービスを宅外に頼ることもできるし、手狭になれば近所に部屋を借りることもできる。そういう立地であることも割り切った設計を後押しした。逆に建物の一部を貸すこともあり得るため、上下階で分割できるように建築基準法上の長屋として確認申請した。

<3種の向き>

3種の空間それぞれが直面する周辺環境によって、空間に向きを与えて開放している。1階は前面道路に通行が多くて隣地建物が迫り、四周囲まれているので上下方向。2階は隣家の壁に向かう南北方向、3階は眺めが良い東西方向、座標で言えばZYX軸の関係になる。

1階は上空からの間接光がやわからかく差し込み、落ち着けるゲストスペースとしての居住性を確保できる。2階は隣家との見合いになるが、窓がまったくない隣家の壁面もあり、ファミリースペースであれば十分許容範囲だ。3階まで上がれば隣家の屋根越しで空が広く、他から見られることもないのでプライベートスペースにはちょうどいい。

3種の空間それぞれに異なる指向性を持たせ、それを家族内で組み合わせられるようにすることで、周辺環境をふまえた生活の楽しさと、使い勝手の良さを提供できないかと考えた。

住宅というよりは、家族というネットワークの、小さな中核施設のようなものかもしれない。

-中佐昭夫-

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