Foto © Mitsumasa Fujitsuka
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知立の寺子屋(teracoya THANK)

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Sede
愛知県知立市
Anno
2016

自然科学の寺子屋
愛知県知立市は東海道五十三次の39番目の宿場町である。
敷地は旧東海道沿いの本陣が置かれた場所にあり、地域の歴史的文脈上、町の要と言っていい。その歴史的重要性から、地元に本社を置き世界的に事業を展開するロボット製造会社が、所有者不在となった土地を入手し、まちづくりを含めた地域貢献の施設をつくることになった。プログラムは「自然科学の知識を科学実験を通して英語で教える学童保育施設(=寺子屋)」と、地域の方々、特に母親たちが気軽に集うことのできる「キッチンスタジオ付きカフェ」のコンプレックス。そこには自社と同じく、自然科学の技能によって世界に羽ばたく道筋を地域の子供達に示したいという事業主の思いがある。
計画に当たって、2本の柱を立てることにした。一つは敷地の歴史性から「歴史的文脈を継承する」ことであり、もう一つは科学実験というプログラムやロボット技術という事業主の背景から「自然科学の原理に即する」というものである。

地域の歴史に連なる
この近辺では旧東海道に面して多くの社寺が残り、落ち着いた街並みを形成しているが、そのどれもが、通り側から順に「低い平入り屋根の門」、パブリック・スペースでもある「境内」、その奥にさらに「大きな平入りの本堂」と続く構成を取っている。これに倣って、カフェや職員室を内包する低い平入りのゲート部分、そこを抜けると、隣接する公園(及びその大樹への景観)と連続する「境内」に相当するホール、その奥に主要機能である教室群を内包する大きな平入り空間、と続く構成とした。古い社寺を訪れた際、低い門をくぐって境内に出ると、本堂の反りのある平入りの大屋根に視線が誘導されて、上空へと自然にヘッドアップする清々しい経験を誰もが持っていると思うが、この経験もまた、大屋根の反り上がる天井へと空間形態が反転されることで保存されている。さらに正面の旧東海道側に立つと、低く垂木の並ぶ軒を持つ平屋根の向こうに、より高い主屋の屋根が見えるが、それはほとんどこの地域の社寺の佇まいそのものである。

自然科学の原理にならう
一方、この建築の存在としてのあり方は、自然科学の最も基底的な原理である重力が決定する形=カテナリー・カーブ(懸垂曲線)に即している。二つの並行する鉄骨製の鳥居状の棟木に、子供のための建築らしく、木でできたニットのようなやわらかな屋根架構を掛け渡すことで、空間全体はやさしく覆われている。この木製ニットは縦糸を欧州赤松集成材の短材(長:1500mm、厚:105mm)として、これを横糸のスチールロッド(φ22mm)2本で貫通する様に編み込むことで形成されるが、カテナリー・カーブの性質上、構造内部には引っ張り方向の力しかかからないため、この様な木製の優しくやわらかな架構によって、最大スパン20mもの無柱の大空間を覆うことが可能になるのである。

多様に現象する、単純な原理
完成した建築は、旧東海道側から見れば、近隣の社寺共に歴史的な街並みを形成する穏やかな佇まいであり、隣の公園側から見れば、自然科学の原理を表明する純粋に幾何学的な姿となって、子供達に自然科学の知を分かりやすく教えている。またさらに、内部に入ればそこはシーツの下のような、やさしく伸びやかな子供のための空間でもある。これらに代表される建築の多様な現れは、無関係にかき集められたのではなく、単純な一つの原理から発している。 地域の多様性に開きながら、同時に健全な原理を芯に持つことで、時間を越えていく普遍的強度を獲得できたらと考えている。

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